藤子不二雄関西マニア座談会の全て

2005年12月に行われた藤子不二雄関西座談会の原文です。

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座談会用カット↑

(NUでは北京ダック式の伯父サンとか消されちゃいました)

名和 

本日は、藤子ファン座談会の関西版ということで、関西方面在住の藤子ファンの皆様にお集まり願いました。年末のお忙しい中、この座談会にお越し頂き、真にありがとうございます。それにしても、こんな濃いメンバーが集結するとは、正直思いもしませんでした()。皆さん、藤子ファンダム内では有名人ですからね。ライトマニアな私が、強烈な個性が際立つ皆さんをまとめて行けるかわかりませんが、とりあえず、本日は司会を務めさせて頂きますので、宜しくお願い致します。
それでは、まず皆様の簡単な自己紹介からお願い致します。
黒幕 

黒幕です。趣味は、飲む!打つ!買う!以上!。           

名和 ・・・・。ちょっと黒幕組合、自己紹介なんで、もっと具体的にお願いしますよ。

黒幕 

(何故か逆ギレ気味で)まだ酒もきてないやろが!。フゥ〜、まぁええわ。

兵庫県在住の黒幕組合。職業は、現時点ではとりあえず会社員ではありますが、勤務時間中、隙を見ては、漫画やイラストを描いている不良社員であります()

趣味は人間観察()。これは思いっきし執筆活動に直結してますね。まぁ、どんな偉い人でも、時として、やらしさや醜さを剥き出しにしてしまうことがありますよね。所詮、人間なんてゴミなんで、そんな汚らしさこそが、本当の人間らしさなんだと思うんです。

私は、漫画やイラストで、人間の業をブラックに顕在化しているんだと藤子ファンの仲間から言われているようですが、私にとっては、それが人間への讃歌なのかも知れません。それから、ペンネームの黒幕組合の由来ですが、A、F両先生関係なく黒い幕で包み込む作風から、いつしか黒幕と言われるようになりました。組合というのは、私自身、分裂気味で、私の中で幾つもの人格が形成されてるからです()。つまり、これらの人格が私という一つの組合を作っているわけです。

藤子ファン仲間の某氏が、私のことを知性と狂気の二律背反と仰っていましたが、知性というのは、ある意味既成概念であり、常識じゃないですか!世の中のあらゆる常識を無視し、狂気に浸って、純粋に自分だけの生き方や見識を押し通す。そこで、初めて人間としての純粋な自由が生まれるんやないでしょうか。ですので、もし私の中に知性があるなら、それも純粋な狂気へと変えたいですね。私が漫画やイラストを描くのは、勿論趣味というのもありますが、もしかしたら、ペンであらゆる権威、建前、常識を打破したいという思いが強いからかも知れません。おっ、酒や!、こんなんでええか?(ジョッキを一気呑みしながら)

名和

 あ、ありがとうございます。        

小谷 

大阪府藤井寺市に住む小谷彰です。

幼い時、テレビでモノクロQちゃんに出会って以来の藤子ファンであり、同時に大の赤塚ファンでもあります。好きな漫画家は他にも沢山いますが、作品自体が少なくても、多くても、作品の好き嫌いがある作家が殆どなんですけど、この三人の先生の作品は、あれ程作品数が多いにもかかわらず、嫌いな作品が全くなく、全作品を集めたくなる希有な漫画家。私にとって究極の先生方なんです。

ペアマッチ

(突然大声で)ちょっと待って下さい!ここは藤子ファンの集いではないのですか?赤塚の名前なんか出さないでくださいよ!赤塚は本当に悪魔なんです!小谷さん、あなたは悪魔教の一員なのですか!?

小谷

え、え?この人一体何を言ってるんですか?

名和

石塚くん、落ち着いて。えー、コタニさん気にしないで続けてください。いつもの病気です。

小谷

趣味は映画観賞、読書、インターネット、テレビゲーム、アニメ、そして漫画。
アニメは、藤子アニメと萌えアニメ。ゲームでは、恋愛シミュレーションが一番好きで、美少女キャラが大好きな「萌え人」であります()
あと、アイドル声優にも好きな人が沢山いて、CD観賞やイベント参加も大きな趣味ですね。今は、田村ゆかりさん、新谷良子さん、山本麻里安さん、野川さくらさん、宮崎羽衣さんが特にお気に入りです。メイド喫茶にもよくお帰りしてますよ()。メイドさんも可愛い子が多くて見とれちゃいます。

それから、勿論藤子同人誌への投稿!現在は、稲垣さん、黒幕さんとご一緒に3誌に参加させて頂いております。近頃は、私の名前も広まったようで、熱心に書いてきた甲斐がありました。今回、このような懇親会を開いて下さり、藤子ファンの皆さんと楽しい交流が出来て、本当に嬉しい限りです。  
ぺアマッチ 

どうも、大阪府堺市在住のペアマッチです。以前は銀河超特急と名乗ってました。年令26歳。製造業に従事しています。現在はマニア的に絶版極美本を掻き集めている最中です。FFランドを極美の状態でそろえることが僕の悲願なのです。本日は、藤子ファンダムの中でも大活躍の皆さんにお会い出来て興奮しております。今夜は徹夜覚悟で、皆さんと本格的な藤子論を戦わせたいと思っておりますので、宜しくお願い致します。
稲垣 

愛知県から来ました稲垣高広です。

藤子漫画を読み始めてから三十年以上が経ちました。

幼い頃から藤子漫画は、私にとって大切な存在でしたが、特に、小学校高学年から、中学生にかけてそれまで読んでいた『ドラえもん』とか『ウメ星デンカ』とか『キテレツ大百科』といった藤本系児童漫画のイメージを覆すような様々な傾向の藤子作品に立て続けに出会い、カルチャーショックを受け、「藤子不二雄」という存在を格段に意識するようになりました。かつて活動していた藤子不二雄公認ファンクラブ「UTOPIA」に入会したのも中学生の頃だったと思います。それ以来、藤子ファン活動の熱心さに波はありましたが、ずっと藤子ファンであり続けています。私の藤子ファンとしての最大の危機は、先生のコンビ解消の時でした。永遠に一緒だと信じ込んでいたお二人がコンビ解消してしまわれたことは、世界が大規模な地割れを起こし、そのまま真っ二つに分裂してしまったような途方も無い衝撃を私の心にもたらしたのです。そのショックから、もうファンをやめてしまおうとさえ思い詰めたくらいです。しかし、藤子漫画は、私にはなくてはならないものだったので、ファンをやめるところまではいきませんでした。時間とともに、コンビ解消を知った傷が癒えていって、最初は思いっきり抵抗のあったFやAというペンネームもまともに受け入れられるようになりました。現在は、koikesanのハンドルネームで「藤子不二雄ファンはここにいる」というブログをやっています。それと、藤子イベントにも、毎回参加させて頂いておりますが、今回のイベントは、傍から見れば、異常と思える程、各人が独自の愛し方で濃密な藤子愛を体現している方々が、一同に会した座談会ですからね。スリリングでディープな常識を揺るがす発見の数々を楽しみにして参りました()

ゲルピン
岐阜は水の都、大垣からやって参りましたペンネームゲルピンくんと申します。

ペンネームは、イカレタカルトGS、ムスタングがたった一枚残したシングル曲「ゲルピンロック」から頂きました。この曲はGSの根本理念ともいうべき軽薄の象徴であると同時に、カーナビーツ、ダイナマイツをも凌駕しかねない程のガレージ度を誇る隠れた名曲なんすよ。趣味は、漫画の他に、音楽、映画ですね。音楽は60年代のガレージ、サイケデリックサウンド。衝動的で荒々しいサウンドには、ある種のカタルシスを感じます。安孫子先生の『わが分裂の花咲ける時』とか70年前後のブラック短篇には、サイケに通ずるテイストの作品が多くて、素晴らしいですね。映画もやはり、そういったテイストのアンダーグラウンドなものが大好きです。好きな女優は、『野良猫ロック』の頃の梶芽衣子さんですね。あの眼光の鋭さにはドキッとさせられますし()、ファションなんかも多いに参考にさせてもらっています。

今日は、コアな藤子マニアな方ばかりのようで、恐縮してしまいますが、初対面ということで、どうかお手柔らかにお願い致します()。    
ゆうあ 

大阪府泉大津市在住のペンネームゆうあと申します。毎回、大量の藤子キャラの美麗イラストをNUに投稿させて頂いておりますので、名前はかなり知れ渡っているかもしれません(苦笑)

藤子漫画の他には、ジャズやクラシック映画が大好きです。一時期、藤子漫画を読んでいない時期もありましたが、この数年間は思いっきり藤子漫画にはまっております。本日は、この座談会を楽しみにして参りました
名和 

自己紹介の段階でマニアックな話がポンポン出ますね()。ウルサ型(失礼)の皆さんを仕切ってゆく自信はありませんが()、まずは、ベタなところで、皆さんの藤子漫画との出会いついてから話を進めて行きたいと思います。  

ペアマッチ

  まず『ドラえもん』のアニメをテレビで視たのが、始まりです。小学生の時、てんとう虫コミックスの『ドラえもん』をお小遣いで少しずつ買っていき、中学に入ると、『ドラえもん』以外の『オバQ』や『パーマン』などを求めて、自転車で古本屋を駆け巡りました。まだその頃は、プレミアも付く前だったので、安い値段で買えました。極美に拘るようになったのは、社会人になってから。最初のボーナスで、以前買った『パーマン』や『オバQ』を綺麗な状態の本に差し替えました。でも、もうそろそろ古くなり汚れが目立って来たので、更なる極美に差し替えよう思ってます。ドラえもんなんて頻繁に新しい版に増刷されるんで定期的に新しい版に差し替えるものでお金がかかってしょうがないんですよ。
黒幕 

本当にいるんやね。こういう極美とか初版にこだわるヤツ(笑)

私もペアマッチくんと一緒で(嘲笑)、アニメ『ドラえもん』で藤子漫画の洗礼を受けました。三歳児の時、テレビで観た『のび太の海底鬼岩城』が、一番古い記憶かな。その頃、既に原作の『ドラえもん』や『エスパー魔美』、『猿』や『不思議街怪奇通り』といったメジャー作品を、親や伯父が買って来ていたので、物心付く前から、藤子不二雄に親しんで参りました。それ以来、ずっーと今に至るまで、藤子ファンであり続けているのですから、まさに、「三つ子の魂百まで」です()。でもここまでマニアックに探求しだしたのはAは「戯れ男」とFは「完全版チンプイ」を買ってからですね。まだまだ読みたいのはあるのですが残ってるのは高い奴ばっかです。
ゲルピンくん 

僕の場合、アニメというより原作が先なんですよ。確か、姉が持っていたてんとう虫コミックスの『ドラえもん』4巻が藤子漫画との最初の出会いですね。しかし、本当に藤子漫画に衝撃を受けたのは、中学生の時に読んだ中央公論社のSFやブラックの愛蔵版ですね。特にA先生のブラック短篇は、文明や社会に対するアンチテーゼを備えたF先生のSF短篇とはまた別に、そこには現実に身につまされる恐怖感というか、心の闇に潜む狂気が描かれていて、大人になり実社会の厳しさを知ってから、そのブラックな世界観がよく分かるようになりました。      

名和 

僕の世代(74年生まれ)から黒幕さん、ゲルピンくん、ペアマッチくんの世代(70年代後半〜80年代初頭生まれ)の方達は、大体、藤子漫画とのファーストコンタクトは、シンエイアニメか、てんとう虫コミックスか、藤子不二雄ランドなんですよね。それから、先程ゲルピンくんも仰っていたように、中学生ぐらいになって、両先生の大人漫画を読んで、藤子漫画の奥深さを知っていくんですけど。年代的に僕らよりも先輩に当たる方々の藤子不二雄初体験は、どんな作品であったり、媒体であったりしたのでしょうか?
稲垣 

私が、藤子漫画に初めて出会ったのは、小学校に上がる前、「幼稚園」誌に連載中だった『モッコロ』くんで、非藤子漫画を含めたあらゆる漫画の中で、私が、生まれて初めて好きになった作品です。子供の頃、昆虫が大好きだった私は、実在の虫と架空の虫が入り混じって、多数登場する『モッコロくん』に強く魅了されました。『モッコロくん』のコロコロした造形にも、非常に親しみを感じましたね。最近ぴっかぴかコミックスで、単行本化されたのは、感激しましたね。『モッコロくん』以外で、幼年期に読んだ藤子漫画は、『ドラえもん』、『新オバケのQ太郎』、『ジャングル黒べえ』などかなぁ。小学三〜四年生になると、てんとう虫コミックスで、『ドラえもん』を筆頭に、『キテレツ大百科』、『ウメ星デンカ』、『21エモン』などの藤本系児童漫画を読みあさるようになりまして、小学校高学年で、安孫子先生の『魔太郎がくる!!』、『ブラック商会変奇郎』に出会ったりして、藤子不二雄という作家の振り幅の大きさに驚嘆しました。その当時は、二人で一人の藤子不二雄でしたから、これが藤本作品、これが安孫子作品という認識がなくて、どちらも「藤子不二雄の漫画」として読んでいました。藤本系と安孫子系の作品があることに気付いたのは、中学生になってから。先生のコンビ解消は、私が大学生の時でした。

ゆうあ 

私も『ドラえもん』から入っていた世代です。キャラクターの可愛らしさに魅了されてファンになりました。藤子漫画はリアルタイムで学年誌やコロコロ等で愛読するようになって、現在に至っています。

小谷 

私の藤子作品とのファーストコンタクトは、モノクロ版オバQであることは、間違いありません。私は、1961年生まれですから、五歳頃になりますね(第一回目から視たかどうかは不明)。その頃、『オバQ』の漫画絵本を買ってもらい、ボロボロになるまで読みました。内容は、Qちゃんのニセモノが多数登場する話で、原作の「にせものがいっぱい」を絵本化したものです。この話の本当の原作は、FFランドで出るまで読んだことがなくて、それまで原作にあるのか、どうかわからず、読めた時は、感慨深かったものです。アニメの方も、その後『パーマン』、『怪物くん』、『ウメ星デンカ』と続けて視ていて、単行本を、時々、母親が買ってくれたのですが、学年誌もずーっと買っていたので、今や、何の作品のどの話が、最初に読んだ原作かはわかりませんが、大体の作品の範囲はわかりますよね。
名和 

僕ら、シンエイの藤子アニメを視て育った世代は、勿論、そのうちの何本かは観たりもしましたが、やはり、モノクロ藤子アニメは、ある種未知の領域みたいなところがあるんです。ですから、小谷さんのモノクロアニメを御覧になっていたというお話を聞かせて頂きますと、何か、戦争体験者の貴重な体験を伺っているような感じなんですよ()

名和

 さて、ここから本題へと入らさせて頂きますが、もう、今日は時間の許す限り、皆さんの好きな藤子作品から、藤子作品の素晴らしさやその魅力について、存分に語って頂きたいんですよ。まずは、皆さんの好きな藤子作品についてから話を進めて行きたいと思います。
稲垣 

藤子漫画についてはメジャーな作品からマイナーなものまで全般的に愛好しているので、好きな作品を一作とか二作とかしぼって選び出すのはかなり難しいですね。でも、選べませんとばかりも言ってられないので、こういう質問があった時は、『ドラえもん』と『魔太郎がくる!!』って答えるようにしてます。どちらも子供の頃からの長いお付き合いですし、この二作の主人公であるのび太と魔太郎には、数ある藤子キャラの中でも共感出来る要素が多いんですよ。この二作は、私にとってバイブル的な存在でしたし、余暇を充足させてくれる娯楽としても、最高に魅惑的です。『ドラえもん』は、藤本漫画の集大成的な作品で、その作品世界の広さと深さは、一生かけても味わい尽くせそうにないレベルです。『魔太郎』は、復讐のカタルシスがたまりませんし、話数が多いのも魅力。怪奇・幻想系から、脱力、シュールまで、様々な趣向で楽しませてくれますね。
ゆうあ 

『ドラえもん』は、これが、児童漫画なのかというくらい深いテーマを持った作品ですよね。ただ、ひたすら笑ってしまう話もあれば、大長編のように、大人の観賞にも耐えられる壮大なテーマと真の優しさや物事の本質を提示してくれたりもする。
小谷 

そうなんですよね。例えば、「ジャイアンよい子だネンネしな」の話では、勝手にスネ夫やジャイアンのクローンを作ったのび太が、ドラに質問するシーンでのドラの台詞「それに人間を作るって大変なことなんだ。幸せにしてあげる義務があるし、一生責任を持って・・・」というのがありますが、この台詞には、とても感動しましたね。子供を「幸せにしてあげる義務がある」というドラ!安易に子供を作り、虐待したり、いい加減に育てる親が多い中、子供を幸せにしてあげる存在だと当たり前のように語る藤本先生の素晴らしい人柄が投影されています
ゲルピンくん 

 そういった部分は、大人にとっても、情操教育にもなりますよね。よく、キャバ嬢で、「ドラちゃん、かわいい〜」みたいなのがいますが、ファンシーキャラとして、『ドラえもん』を見るのではなく、作品の根底に流れるテーマやメッセージみたいなものを読み取って欲しいですね。
黒幕 

 大長編なんてのは、壮大なエンターテーメントですけど、「おれは歩く!! のび太と一緒にな!!とか普段は嫌な奴のジャイアンが急にいい子になるシーン、自分のように、ドス黒い人格を持つ人間でさえ、ジーンときますよね。ま、何回もやられると反吐がでますけど。本当の友情や優しさってベタベタしたものじゃないんだ、傷口を舐め合ったり、ただ同情したりするのは、真の友情ではないんだということを、子供心に感じたりしました。ああいう時こそ本当の姿があらわれるんですよ。未収録の方のターザンパンツでしずちゃんが食べられるときのジャイアンスネ夫の「おれ一番じゃなくて良かった。」てのも人間の本音を垣間見れてもっと好きなんですが。

名和

「恐竜狩り」の話で恐竜に襲われたドラえもんとのび太が互いに先に食べられる順番を押し付けあうシーンも極限の人間の出す本音でしょうね。それで思い出して笑っちゃうんですが、ある40前童貞の藤子ファンがいましてね、ファンダムで知り合ったシュガーさんって20代の女の子が愛想いいもんだから、もう自分に気があるとか思い込んじゃって、殆どストーカーなっちゃって付きまとってるんですが、あるときシュガーさんが居酒屋で酔っ払た他のファンにセクハラされてピンチになったんですよ、だけどそいつ助けるどころか何もせずにみてるんですよ。しかも会が終わってからメールで「なんでああいう事が起きる前に止めてくれなかったんだ!」とセクハラが大事になるまえに制止させた私にいちゃもんつけてくる始末なんですよ。あ、すいませんちょっと脱線しましたね。ともかく、そんな奴にかぎって「のび太の恐竜」でしずちゃんを守ってあげれないことが悔しくてないてるシーンに感動したとかなんか語ってるのをみると非常に滑稽ですよ。
ペアマッチ 

『ドラえもん』は、僕にとって、座右の書です。学校の道徳の授業以上に沢山のことを学びました。「45年後」という作品の中で、大人になったのび太が、現在ののび太に「きみはこれから何度でもつまづく。でもそのたびに立ち直る強さも持っているんだよ」と語るシーンがあるんです。僕は弱い人間だから、能力的なことや人間関係の軋轢に負けて、時折、本当にめげてしまいそうな時があるんです。でも、そんな度、この話や「さよならドラえもん」といった自立するのび太を主人公とした作品を読むんです。そうすると、自然と勇気が湧いてきて、精一杯前向きに生きて行こうという気持ちになるんです。
名和 

それこそ、藤本先生が『ドラえもん』を通して最も伝えたいことかも知れないね。他の方も、思い入れのある作品などありましたら、どんどん仰ってみて下さい。
ゲルピン 

『魔太郎』は、僕が一番好きな作品ですね。独善的ファッショな完全懲悪だけではなく、作品世界に漂う暗く沈んだ幻想美が、とても魅力的です。もし実写化されたら、CGは極力控えて欲しいですね。「ウラミ念法蟻攻め」をモデルアニメもしくはクレイアニメで観てみたいです。
黒幕 

蟻攻めとは素敵なところをえらびますねえ。「魔」つながりで姉妹作の『エスパー魔美』好きですね。涙あり、笑いあり、ヌードあり、あれほど慈愛に満ちた娘は、三次元の世界では見たことないですよ。前に付き合ってた娘は、魔美と全く逆の性格してたし()。とにかく、『エスパー魔美』の素晴らしさと言ったら・・・、お前ら、ワイのイメージと合わへん思っとるんやろ?ほっとけ!。
稲垣 

()魔美は、人柄とルックスの両面で魅力が際立ってますよね。野暮ったいけれど知的な高畑くんとのコンビも素敵です。「くたばれ評論家」での創作・評論に纏わる言説や、「問題はカニ缶!?」での価値観の相違の話などは、私のものの見方や考え方の尺度になるくらい大きな影響を与えてくれました。理性を信頼する近代合理主義的な思考と、日本人的な人情ドラマとが幸運な出会いを果たした作品だなって感じてます。ちょっとエッチなところも外せないポイントですね()
小谷 

『エスパー魔美』は、魔美と高畑くんの絶妙なコンビネーションによる人間愛に満ちた人助けのドラマが、素晴らしくて、圧倒されます!魔美の人を思う優しさ、溢れ出さんばかりの人への愛情から行動が駆け出し気味の魔美を、高畑くんが助言で上手く導いていく友情も素敵で、見事な青春ドラマになっています。魔美も高畑くんも人格者で、その活躍と生真面目な行動は、尊敬の目で見てしまいます。作品中の社会の描写も、児童漫画にありがちな甘い描写ではなく、現実的に描かかれているのも、良いですね。魔美の両親も、理想の人達で、羨ましくなるほど幸福な家庭のお嬢さんという設定も、魔美の優しい性格描写に更なる説得力を与えていますね。何度読んでも、心打たれる感動の作品です。
ゲルピン 

魔美』を読んでいると、「人間というのは、自分一人で生きているんじゃないんだ」ということを、さり気なく気付かせてくれますね。 
小谷 

「問題はカニ缶?」で、高畑くんが、他人の価値観を大事にすることの大切さを魔美に話す場面。他人の価値観を尊重することの大切さを、これほどはっきりと提示した漫画は見たことありません。人は、どうしても自分の価値観が本当だと思いがち。ここまで他人の価値観を大らかに受け入れられる高畑くんは、本当に素晴らしいですね。こういう人ばかりなら、この世界には、争いなど起こらないのでしょうね。
ゆうあ 

要するに藤子漫画というのは、ヒューマンドラマなんですよね。人間への限りない愛の讃歌。それをオブラードに包んで良質なエンターテーメントに仕上げている。
黒幕 

エンターテーメントという点では、『モジャ公』なんかも最高傑作の一つですね。読み応えのあるストーリー、クセのあるキャラクター、モジャ公の台詞「おれチクロ入り」には、大爆笑しました()
ゲルピン 

「不死身のダンボコ」を読んだ衝撃は、未だに忘れられないですね。ホント、児童漫画の範疇を完全に越えてますもんね。よく『21エモン』のセルフカバーだと言われているみたいですけど、全くの別モノのような気がしますね。リアルタイムで、それほど人気が盛り上がらなかったのは、当時の子供には、内容が難しかったのかもしれませんね。
稲垣 

当時の子供たちがどこまで深く理解したかはともかく、ジュブナイルSF冒険ものの傑作だとは思いますよ。主人公三人が、そこらへんに当たり前にいそうな男の子の性格を体現しているので、彼らに自己を投影しやすく、あたかも自分が宇宙へ冒険に出掛けているようなワクワク感を覚えますね。
小谷 

『モジャ公』の醍醐味は、何と言っても、本格SFとしての魅力です。私は大のSFファンで、『スタートレック』シリーズの大ファンでもありますが、この作品は、日常が舞台なのが大半の藤子作品の中で、毎回、違う星へ行き、事件が巻き起こるという、正に『スタートレック』的な設定が魅力です。外見は、少年と宇宙人とロボットという児童漫画の王道なのに、ストーリーは、本格SFというSF作家としての藤本先生の真骨頂と言うべき作品なのがたまりません。『スタートレック』で使っても、違和感ない本格SF的なアイデア満載の作品ですね。
稲垣 

なるほど、『モジャ公』は、『スタートレック』的設定のマンガなんですね!私も、『モジャ公』はスペースオペラの傑作だと思います。星から星へと冒険する物語という視点では、ヴァン・ヴォークトのSF小説『宇宙船ビーグル号の冒険』なんかが、藤本先生に影響を与えていそうですね。藤本先生ご自身が、この『宇宙船ビーグル号の冒険』を好きだとおっしゃってましたから。あと、『モジャ公』の魅力としては、SF特有の視点のズレや、哲学的なものの捉え方が描かれている点ですね。ハッと心の目を見開かされます。 ブラックユーモアや風刺などきつめなスパイスも効いていて、知的エンターテーメントの様相も呈してますよね。
黒幕 

 視点のズレというか、もしかしたら、人間の日常を逸脱したところこそが、人間が生きるべき本当の世界なんじゃないかと気付かせてくれる作品って、他もありますよね。私の大好きな安孫子作品の一つに、『野蛮人』というのがあるんですが、これが、また凄い作品なんです。人喰い土人のオンパレード()。東京の文明社会に未開人が住み着くという設定で、異分子が日常に入り込む藤子漫画の黄金路線を踏まえたシチュエーションコメディなんですけど、土人と文明人が、ヒエラルキーのないコミュニティーで、共存しているんですよね。実は、こういった原始共産社会って、これまで人間が生きてきた中で、一番の理想社会だったのではないかと思わせてくれるんですよね。結構、みんな、こういうのが好きなんじゃないかな()

名和 

『野蛮人』の世界観が好きというのは、黒幕さんらしいですね。ところで、ペアマッチくんは特にどんな藤子漫画が好きですか?
ペアマッチ 

特に好きなのは、『パーマン』、『キテレツ大百科』、『ジャングル黒べえ』と言った作品です。人生で大切なことを沢山教わりました。例えば、『ジャン黒』の最終回「さよなら黒べえ」では、やれば出来るという自信、恩義に対する義理堅さ。キテレツ大百科が燃えてしまったけど、挫けることなく自分で道を切り開いて行こう宣言するキテレツからは、強い自立の心を。藤子漫画は子供の頃より、幾度なく読んでいるんですけど、本当の強さとは何か、優しさとは何かということを大人になった今でも、気付かせてくれますね。
ゆうあ

藤子少年漫画は、甲乙付け難い程、良質な作品ばかりですよね。完璧と言っていい程オーソドックスな作風でありながら、確固たるテーマを備えている。
黒幕 

少年物では、『マボロシ変太夫』なども大好きな作品ですね。一度踏み入れたら、二度と戻って来れないという『不思議町怪奇通り』のシチュエーションを更に幻想的に昇華しつつ、『狂人軍』のアナーキーな世界観を万人にわかりやすくマイルドに表現した傑作だと思います。以前、京都A展でのトークショーで、安孫子先生が「絶対ヒットすると思ったのにコケタ作品」として『変太夫』を挙げていましたが、ヒットする要素は十分に備えていますよ。
ゲルピン

 『変太夫』は、ルネ・マグリットの超現実主義の世界観に通じるものがありますよね。例えば、ジャーニー氏の描く絵とか、マボロシ市の象徴である巨大な木とか何気ない演出に安孫子先生のイマジネーションの無限性を感じさせます。でも、後半の「変太夫ひとり旅シリーズ」になると、普通?のナンセンスギャグ漫画に変貌していったのが、残念でしたが

黒幕

永遠に出れないマボロ市や物価が安いという初期の設定もすっかりわすれてる。あの幻想的な世界観が生かされなかったのが残念です。

名和 

壮大なスケールとロマンと言うと、まず文明批評や環境問題についても言及されるSF短篇であったり、強いメッセージ性を備えた『大長編ドラ』や『ぼん』といった藤本作品が語られることが多いのですが、安孫子作品も地味ながら、現実に則したロマンを感じさせる作品って多いんですよね。皆さんは、どの辺の安孫子作品にロマンをお感じになりますか?。
ペアマッチ 

やはり実録系の作品でしょうか。私の場合、何といっても『毛沢東伝』ですね。はっきり言って、現在、中国社会においては、文化大革命そのものが、虐殺と圧政の暗黒史として語られていますが、イデオロギー云々は別として、この作品に描かれた毛沢東が中華人民共和国を建国するプロセスは、非常にヒロイックで感動的ですね。

ゆうあ

 私は『まんが道』ですかね。藤子先生の自伝漫画であること自体に、まず惹かれますね。フィクションも多分にあるでしょうけど、お互いの友情で支え合いながら、夢に向かって邁進する姿は、尊く美しいです。
稲垣 

私は、この作品のおかげで、藤子マンガだけでなく、藤子不二雄という人物への熱狂も深まりました。『まんが道』によって、私の中での藤子先生の神格化が劇的に進行したんです。マンガ家を目指す満賀と才野のひたむきな情熱、成功と挫折、喜怒哀楽が、私の心を熱く揺さぶりますし、そういうストイックな青春像の中に、満賀の恋心がそこはかとなく描かれるところが、作品に彩りを与えていますね。涼子さんのキスや自殺のエピソードは、思春期の私には刺激的でした。主人公が話の進展とともに成長し出世していくビルドゥングスロマンの魅力もたっぷりです。昭和30年前後のマンガ作品や、映画、雑誌、文化、風俗、情景などが続々ととりあげられるので、私が生まれる前の昭和情緒にひたることもできますね。戦後マンガ史を漫画という形式で読めるというのも喜びです。
ゲルピン 

『少年時代』も素晴らしい作品ですよね。初めて読んだ時の衝撃は忘れられません。ヒエラルキーを越えて、進一とタケシに本当の友情が芽生えた時、二人が別れていくというアイロニーを孕んだあのラストシーンは、感動的ですらあります。少年達の凄まじい権力闘争も、実にスリリングに描かれていて、気が付くと、手に汗を握って読んでいました。
稲垣 進一とタケシのタケシに翻弄される進一の苦悩や葛藤に深く感情移入できるんです。厚みのある心理劇だと思いますよ。いじめの問題と真摯に向き合った作品としても、独裁者タケシが権力を失墜するまでの権力闘争劇としても、戦時中の田舎の子どもたちの生活をリアルに描いた記録としても高く評価できます。はやく続きを読みたくなるヒキの強さもあったりして、優れたエンターテインメントとしての要素も備えてるんじゃないでしょうか。実際に疎開経験のある安孫子先生の少年時代の心情を追体験する、という読み方をしても興奮しますね。
名和

 藤子漫画の強烈な魅力のひとつにパラレルワールドというのがありますね。日常から見た非日常というか、大長編『ドラえもん』のように、我々の知らないところでは、とんでもない事件が起こっているんだというシチュエーション。これも、藤子漫画独特の世界観だと思うのですが、その辺りについては、どう思われますか?

 

小谷 

パラレルワールドと言うか、もう一つの歴史物語と言った方が適切だとは思うんですけど、『TPぼん』。これは、数ある藤子作品の中でも、特に素晴らしい作品の一つです。悲惨な歴史の中で無残に死んでいった沢山の人達への、藤本先生の同情心から生まれた鎮魂歌とも言える作品で、私も歴史を深く知れば知る程、理不尽な死に方をした人のいかに多いことか!と戦慄しました。藤本先生も歴史が好きだったので、恐ろしい過去の現実に何度も驚き、怒りを覚えた事は間違いないでしょう。現実ではどうしようもないが漫画の中でなら救ってあげられる、という藤本先生の優しさの感情から生まれた名作です。横暴な者が天下を築いた例も多く、私も歴史を修正したい衝動にかられるだけにこの作品にはとても共感します。でも、不幸な死に方をした人達を全員救ってハッピーエンド、という非現実なファンタジーにはせず、歴史に全く影響しない人限定で救うという話にした事で、SFとしても十分説得力を持つ傑作になっていますよね。沢山の死に行く人々の中からただ一人しか救えないもどかしさに苦しむぼん、リーム、ユミ子の姿は、藤本先生の「過去はどうにも出来ない」という歯痒さの投影とも言え、それでもその一人を救う事に全力を尽くすT・Pの姿には心を打たれました。
初めてこの作品を読んだ時は、まず、この物語設定に感動しましたね。
ゆうあ 

人間の尊厳を訴えていることが、身に染みて伝わってきます。「人間一人の命は、何物にも代えがたいくらいに重い」そんなテーマを、決してお説教臭く描かずに、スペクタル映画にも匹敵するエンターテーメントに昇華しているところが素晴らしいです。
稲垣 

だから、読後に大きな満足感を得られるんですよね。それに、藤本先生の歴史への造詣が、存分に描出されているうえ、SF的な仕掛けが随所にほどこされ、冒険ヒーローものの醍醐味があります。我々は、現在という枠に、常に縛り付けられてた存在であるわけですが、『TP・ぼん』を読むことで、この目で見ることが出来ない過去や未来が擬似体験出来て、ロマンが膨らむんですよね。
名和 

SF、ロマン、ホラー、ギャグ、確かに藤子両先生が手に染めた漫画は、ともすれば、全てのジャンルを網羅しているんじゃないかと思うぐらい多彩なんですよね。勿論、色々な映画や小説からのイスピレーションもあるのでしょうけど、藤子先生の場合、その影響を受けたものを、素晴らしい胃袋(センス)でもって消化しているので、具体的な名前を出して申し訳ないんですけど、石ノ森章太郎先生なんかとは違い、無様に丸ごと吐き出すことはないんですよ。お二人とも、そこが凄いですね。
黒幕 

 それに、ギャグセンスに凄いものがありますね。特に、安孫子先生の場合、ギャグ漫画の頂点にして極限までいっちゃったんじゃないかという気がします。中でも、『狂人軍』は安孫子先生の最高傑作!。あの作品全体に漂うラリパッパ感や悪のり的なハチャメチャギャグの応酬は、天才の発想、いや人間の創造力をも超えてます。50になるうちの母親なんか、一番好きな漫画だって言ってますね。それと、絶妙な無駄が可笑しさを増幅させるのも安孫子ギャグの特徴です。ナンセンスギャグの開祖として、同時代の『天才バカボン』とかの赤塚不二夫作品が評価されているみたいですが、安孫子先生の方が、もっと過激で、ナンセンス度が高く、ギャグセンスも非常に鋭いですね。

名和 

 僕も『狂人軍』を読ませて頂きましたが、本当にぶっ飛びましたね。まとめて読んだ後、23日頭がクラクラしてましたからね。僕の日々の常軌を逸した言動も、その後遺症かも知れません()。昔読んだ『レッツラゴン』以上のショックを受けましたよ。

ペアマッチ

当たり前じゃないですか。赤塚なんて全集みたいなの出してるくせにヒット作なんか1つもないじゃないですか。あいつは確かに三億円事件を計画し成功したりチェルノブイリの原子力発電所を爆破したり、犯罪者としては一流ですが漫画家としては三流のクズですからね。そんなものと比べること自体藤子先生に対する冒涜ですよ!
ゲルピン 

 それから、二度と帰らぬ少年日々なんかキザに聞こえるかも知れませんが、郷愁というのも藤子漫画のキーワードですよね。僕は、ピーターパン・シンドロームなので、ずーっと小学生でいたかったんですよ。だから、藤子ワールドに浸っていると、童貞、いや少年
だった頃の自分を取り戻せるみたいな…()。例えば、『新オバケのQ太郎』の最終回「九時カエル」。僕、こんな話に弱いんですよ。
名和 

「今夜はねないでしゃべりあかそう」、「ずうっと今夜だといいね。いつまでもいつまでも」。ギャグの中にも泣かせる要素があるのが、いいですね。少年時代の甘酸っぱい記憶が蘇ってくるような

黒幕

わたしは、そうか正ちゃんはもう子供じゃないってことだな…のほうがジーンとしましたが、九時カエルがあってこそあの劇画オバQも際立つんですよ。
小谷 

サンタはくろうする」の巻で描かれたQちゃんとOちゃんのお互いを思い遣る兄弟愛も素敵ですね。QちゃんはOちゃんの夢を壊さないように頑張るし、Oちゃんは真実を知った後も、兄さんの気持ちを大切にしようとする。優しい兄弟の交歓、素晴らしいですよ。
黒幕 

『新オバケのQ太郎』は、ギャグ漫画として、完璧と言っても差し支えないぐらいの大傑作です。藤本先生のギャグ漫画は、どれも笑えますが、これが一番凄い。「ダレ太郎」とか「Qちゃんは口がかたい」なんて、何回読んでも笑えます。一番好きなのは、「U子のプレゼント」かな。「もてもてオバQ」で、伊奈子さんが、伸一兄さんよりもQちゃんの方が気に入って、伸ちゃんがイライラするのも、最高!あれはAキャラだからさらにおかしさが際立ってるんですよ。このまえの富山ツアーにもあんな風になってるヤツがいましたよね?()
ゲルピン

 「王さまの耳はロバの耳」で、オバQが、バナナを拾って食べたら、それが犬のウンコだったという話。これもキてますね。
稲垣 

『新オバケのQ太郎』は、ギャグの質や、絵の安定感、構成の練り具合など、多方面にわたって完成度が高いですね。藤本先生が子どもの頃から親しんでおられた落語の要素を、ネタからもテンポからもストーリー構成からも感じ取れます。まさに古典落語の境地ですね。Qちゃんの性格や表情はこのうえなくチャーミング。これが、『オバQ』の何よりの魅力ですね。
黒幕 

ホント、藤本漫画の魅力は、キャラクターと表情だと思います。安孫子先生も、勿論そうですが、日本の漫画家で、これほど魅力的なキャラクターを創造した漫画家はいませんよ。

小谷 

『オバケのQ太郎』は、正に私にとっての藤子漫画の原点!。旧作と新作では幾分雰囲気が違いますが、どちらも好きです。旧作では、人間界のことを知らないため、とんちんかんな騒動を巻き起こすQちゃんでしたが、新作では、ラブコメ要素とOちゃんが加わり、やたら人間くさくなったQちゃんは、感情が激しくなりました。それぞれ違う面白さがありますね。

ゲルピン 

旧作もいいんですけど、石森章太郎やスタジオゼロとかの雑な絵が入っていて、ちょっと醜いところがあるのが残念ですね。石森のよっちゃんなんか見るに耐えませんもの。

ゆうあ

あんなの俺より下手ですよ。

 


名和 

ギャグ漫画というのは、藤子先生の作品の中でも、重要な割合を占めているだけではなく、その作品ひとつひとつがその後のギャグ漫画の原点となっている作品が、非常に多いんですよね。皆さんの好きな藤子ギャグ作品について教えて下さい。
稲垣 

まず『仮面太郎』ですね。これは、安孫子先生の仮面趣味が、最も鮮やかに結実した作品だと思います。作中に出てくる種々の仮面のデザインに奇妙な魅力を感じます。主人公の仮面太郎が、常に仮面を身につけることで自分の素性や内面を隠蔽し続けていながら、その仮面の奥から折々に彼の悲しみが垣間見えます。そういうキャラの奥行きが心を打つんですよね。とにかく『仮面太郎』は、仮面の造形と由来がかもしだす神秘とか、顔の美醜に翻弄される人間の本性とか、ギャグマンガらしい笑いとか、作品全体からにじむペーソスとか、そういったものが渾然一体となっていて、他のどんな作品にもない独特のテイストを味わえるんです。
ゲルピン 

僕は、『怪物くん』が大好きですね。とにかく、賑やかで個性的な怪物たちが無尽蔵に出てくるところが、楽しいです。『怪物くん』って、結構、漫画の本道から外れているんですよね。漫画の文法というか、起承転結を思いっきり無視してますからね。でも、そういった八方破れの魅力というかハイテンションなノリが、『怪物くん』を大傑作にしているんでしょう。『怪物くん』には、藤本ギャグとは、また違った突き抜けた解放感がありますね。それに、『忍者ハットリくん』もそうですが、当時の流行を貪欲なまでに取り入れているのも、安孫子先生のアンテナの高さを感じますね。
ペアマッチ 

僕は、『パーマン』が大好きなんです。旧作は、「鉄の棺桶を突破せよ」とか「怪人ネタボール」とか、夜中にトイレに行けなくなるほど恐い作品が多いんですよ。でも、新作は、ラブコメ的な要素もあっていいですね。中でも大爆笑なのは、ドン石川とか魔土災炎が絡んでくる話。とにかく間抜け過ぎて最高に笑えます。それに、敵役が本物の悪者に成り切れないところに、藤本先生の人間的な優しさを感じさせますね。
黒幕 

ギャグの強烈さという点では、ゴンスケが活躍する後期の『ウメ星デンカ』もいいですね。ナンセンス度も高いし。間抜けで心底お人好しの王様一家が、他愛もないことで、大騒ぎするのが楽しいですね。『ドラえもん』も『新オバケのQ太郎』もそうですが、台詞廻しが秀逸です。ネームで笑わせる漫画ってなかなかないですよ。
ゲルピン 

『エスパー魔美』で、高畑くんが、コンポコをチンポコと呼んでしまったりとか()
小谷 

私が爆笑したのは、『モジャ公』の「恐竜の星」での空夫の台詞「藤子不二雄はくるってる!」ですね。シリアスな場面で突然出るギャグの瞬発力と爆発力が最高!前後のモジャ公の台詞も含めてリズムも最高です。FFランドでは、この台詞が替えられてしまったのが残念でなりません。
名和 

ネームは勿論ですが、藤子漫画は言葉のもじりそのものが面白いですよね。魔美のカニ缶にもそうですが、固有名詞の千葉県一とかドクターストップアバレちゃんとか笑えますものね。あと、語尾の言い回し。ゴンスケの「ンダー」とかエビス目先生の支離滅裂なしゃべり方とか、ホント独特の言語センスが光っていますよね。
黒幕 

それから、これはギャグの範疇に入るのかなぁ。『戯れ男』もムチャクチャ面白いですね。石部金吉や茂手内先生など、強烈なキャラが最高です。何てったって、「乱交パーチィ」ですよ「乱交パーチィ」。私も、合コンの席で、「乱交パーチィ」と絶叫したら、茂手内先生同様、女の子にドン引きされました(一同超爆笑)。第一回目のダークヒーロー的な戯れ男の活躍も痛快ですね。男なら、誰でも戯れ男みたいに生きたいと思うんじゃないですかね。将来、大物になるのかと思ったら、『戯れ師』で死んじゃった()

名和 

ギャグのジャンルは、安孫先生の方が豊富ですね。ナンセンス物とか変身三部作とか。安孫子ギャグでは、『ミス・ドラキュラ』が一番好きかな。ミスドラは『プロゴルファー猿』の紅蜂と並ぶ安孫子女性キャラの集大成というのもありますが、洒落ているんですよね、作品そのものが。サラリーマンの悲喜こもごもだけではなく、ゴージャスな大人の女性のアーバンライフスタイルが華やかに描かれていたり。

黒幕 

安孫子ギャグ作品では、『黒ベエ』もいいですね。芸術的な絵と幻想的なストーリーにしびれます。「スズキ・ミチオの復讐計画」、「しごく者しごかれる者」なんかは、心理劇という観点からみても面白いですよ。最近のワルぶった主人公が善行する偽悪漫画には、これを見習えと言いたい!()
稲垣 

確かに、『黒べエ』ストーリー、ビジュアルともに上質のブラック・ユーモアですね。実験的で詩情あふれるプロローグを読むだけでも、傑作の予感が濃厚に立ち込めています。今年(2005年)完結したAランド149冊の中から最高の一冊を選ぶなら、『黒ベエ』1巻と言ってもいいくらいです。
名和 

『戯れ男』のような劇画的なものもあれば、『スーパーさん』や『刑事ネコロンボ』のような脱力系のものもある。ブラック短篇やSF短篇でも、判断の別れるところでしょうけど、ギャグ的要素の強い作品も多々あります。考えてみれば、ギャグ漫画だけでも、これほどのバリエーションを備えた作家というのも希有なのではないでしょうか。 
ゲルピン 

そうですね。例えば、『田園交響楽』なんかも、ブラックユーモアにカテゴライズされるんでしょうけど、扉からしてアーティステックですものね。風景描写からカット割りに至るまで、正にATG映画そのものですよ。
ペアマッチ 

ブラックユーモアと言えば、真っ先に思い浮かべるのが『笑ゥせえるすまん』なんですけど、今の若い漫画家では、とても描けない内容ですよね。やはり、人生の酸いも甘いも知り尽くしていらっしゃる安孫子先生だから描けたのだと思います。厳しい現実の世界で生きているうちに、夢が欲望へと変わっていく大人の醜さが作品そのものに映し出されていて、当時、小学生だった僕にとっては、非常に衝撃的でしたね。いずれ、自分も年令を重ねて喪黒のお客様のような大人になるのかも知れませんけど()

名和

 今、石塚くんから『笑ゥせぇるすまん』の話題が出ましたが、皆さんの好きなSF短篇、ブラック短篇についてお聞きしたいと思います。
稲垣 

好きなブラック短篇で、まず、真っ先に思い浮かぶのが『マグリットの石』ですね。マグリットが描いた空中に浮かぶ不思議な石を貼り込んだ不条理なビジュアルがまず鮮烈ですね。ありふれた光景のなかに、空に浮かぶ石というたった一つの異物が侵入しただけで、こうまで見たこともない狂気じみた異世界が出来上がるのか!と驚きました。安孫子先生がこの作品で試みた手法は、個人の狂気をビジュアルで表現する方法論として画期的だと思いますね。主人公の眼鏡のレンズに石が映った絵は、微妙に笑えます()
小谷 

私は、『ひっとらぁ伯父サン』が好きなんですよ。この作品は、毒の強さとインパクトにおいて、トップクラスですね。顔はヒトラーだけど、気前がよく、気のいいおじさんとして周囲に好感を持たせた男が、やがてその人達を洗脳し、そして支配していく様は、ゾクゾクする程の迫力があります。
稲垣 

確かに『ひっとらぁ伯父サン』は、続編的な『情熱的な日々』も含め、平凡で平和な家庭や横丁が、一人のおじさんの闖入で、不穏な空間に染まっていくそのプロセスがたまりませんよね。そもそも、家庭とか横丁がファシズムに覆われていくっていう発想が面白いし、ヒトラーをカリカチュアしたおじさんを主人公にするなんて、とんでもなく突飛な設定ですよね。そんなとんでもない発想と設定の作品なんですが、どこにでもあるような横丁を舞台に選び、話の運び方が着実で、主人公の人物造形が丁寧だったりもして、こういう出来事が近所で実際に起こっているかもしれない、なんてありありとしたリアリティを感じるんです。国家とか世界ってレベルのファシズムじゃない分、身近な、真に迫った恐怖をかき立てられるんですよ。安孫子先生が駆使した黒と白の画面構成や写真のコラージュといった技法が、作品の主題と見事に溶け込んだ代表例だとも思いますね。
黒幕 

シリーズ化されなかったのが、悔やまれますね。最初に読んだヒットラーものが伯父サンだったので、これでヒトラー像が刷り込まれてしまいました。特に好きなのは、総統が日記を書くシーンです。読み手に本音を知らしめる演出として最高です。そういえば、これと同じようなシーンが、初期の『魔太郎』や『黒ベエ』の「スズキミチオの復讐計画」でもありましたね。『オヤジ坊太郎』でも、総統の劣化版が登場してきて、爆笑しました。
小谷 

正に、安孫子先生のギャグ精神が頂点に達していた時代ならではのブラック作品と言えますね。
名和 

連載となれば、間違いなく安孫子先生の代表作の一つに数えられたと思うんですよ。「ギミア・ブレイク」で『笑ゥせえるすまん』の後にアニメ化されたりしたら、シリーズ化も夢ではなかったのでしょうけどね。もう、さすがに今からはアニメ化も無理でしょうから、せめて、実写映画化して欲しいですね。ビートたけし主演で(一同爆笑)
小谷 

『わが分裂の花咲ける時』も私の好きなブラック短篇です。受験ノイローゼの青年の狂気を描いた作品ですが、何といっても、青年の布団の中に花火があがっているというビジュアルイメージに圧倒されます。他にも、貝や絵画、祭りの風景など、加え絵的にも、色んなエフェクトを駆使して、狂気を絵で表現しているのが凄いですね。
稲垣 

起承転結を基調とした判りやすい物語性を解体し、狂気の精神世界を描き出した、観念的な詩のようなマンガですね。実験的なマンガをたくさん描かれた安孫子先生ですが、そのなかでもこの作品は前衛性を極めていると思います。コマとコマとのつながりが、主人公の青年の脳細胞と脳細胞を接合するシナプスの役割を担っているようで、作品全体が、なんていうか、主人公の人格や精神作用をつかさどる大脳そのものの暗喩であるような気すらしてきます。宙に浮かぶサザエの貝殻に入り込む主人公の行為を、自我の殻に潜り込んで自閉する彼の精神状態とダブらせたシーンだけでもとても素晴らしいんですが、ほかにも神経を鋭く刺激するような絵がいっぱいあって、言語化不可能な狂気の世界を、イマジネーションあふれる絵と絵の連続で体験してるような、めくるめく気分にさせられます。見開き大ゴマの、後ろ向きの群集のなか主人公ひとりだけがこちらを向いてる絵も、強烈です。
小谷 

狂気を祭りで表しているのと最後に花火で終わるのは、この青年にとって祭りこそが安息の場所ということなのでしょうか?挿入の詩の作者は、『愛しり』のように安孫子先生なのか気になります。華やかな詩が不気味な効果をあげていますね。
ゲルピン 

あれこそまさにサイケです!ヒトコマヒトコマが、精神の覚醒というか、LSDによる幻覚を視覚的に表しているようでクラクラしますよ。あのロジカルではない感覚は、日本の若者文化全体がフラワーパワーに呼応した70年という時代だからこそ描けたんでしょうね。
ペアマッチ 

「ブラックユーモア短篇集」の中か、好きな作品を選ぶなら、私の場合、超ナンセンスな『災難厄郎』や少年漫画の王道的作品とも言える『鳥人くーん』、そして、劇画的効果の格好よさとシュールな世界観が魅力の『不思議町怪奇通り』などですけど、最も衝撃を受けたのは、大日帝国の中国侵略を題材とした『三光』やベトナム戦争時の惨劇の舞台をソンミ村から新宿に移した『シンジュク村大虐殺』ですね。戦争によって、人間が醜い獣のようになってしまう恐ろしさ、ゾッとします。『三光』で、上官の命令により日本兵が大陸の子供を殺してしまった後、「ちくしょう、オレは人間じゃなくなっちまったんだ」と絶叫するシーンがあるんですが、このシーンにこそ、安孫子先生の戦争に対する忌まわしい感情が、最も強く投射されているような気がするんです。『シンジュク村』では、「彼らは何のために戦うのか知らなかったし、我々も何故戦っているのかわからなかったんだ」という米兵の証言の引用が非常に印象的でした。実際、残虐非道を繰り広げて来た兵隊達も、みんなこのような気持ちで戦地に赴いていたのかも知れませんね。森村誠一の『悪魔の飽食』と同様、この二作品に関しては、人間の尊厳とは何かを深く考えさせられました。
小谷 

戦争を題材とした作品では、『赤紙きたる』。あれも恐ろしいですね。平和な日本に住む青年に、突然、赤紙がくるという不条理さが、何とも恐いです。私は戦後生まれですが、戦争の記事や番組が、今よりずっと多かった時代に育ったので、赤紙の恐ろしさは実感しています。この作品は日常が舞台なだけに、リアルな恐怖を感じるし、何故、平和な日本でこんなことが?という不条理さと主人公が何処に連れていかれるのかわからないラストが、実に衝撃的でした。
名和 

それから、ブラックとは言えませんけど、『五百億円の鼠』とか『ハレムのやさしい王様』とかの実録物も、作品数こそは少ないですが、非常に際立った存在ですよね。犯罪を犯す人間の心理を生々しく描き切っていますものね。帝銀事件や下山事件などのGHQ絡みの重大事件も是非、コミカライズして欲しかったですね。安孫子先生が描かれると、何故、事件が冤罪になったり、未解決で終わったのかという深い洞察と壮絶な人間ドラマを持って展開して行きそうです。
ゆうあ 

『五百億円の鼠』なんか、サスペンスドラマとしても、高い完成度を誇る作品です。極限状態下に置かれた人間の心理もなかなかよく描けています。これを映画化したら、絶対にヒットしますよ!
黒幕 

そういうハードなブラックとは違ったショート・ショート的な作品も傑作が多いですね。『恋文』とか『社長幼稚園』とか。特に『社長幼稚園』なんかは、人間の退廃的な側面を実にリアルに、そしてシニカルに表しています。若い女の先生を襲う社長連中の手の動きの生々しさとか、ああいうのに弱いですね。グッときます。藤本先生の『やすらぎの館』に通ずる題材ですよね。

ゲルピン 

『社長幼稚園』なんて、まんま東映ポルノですもんね。あの社長連中なんて、ホント遠藤辰雄や名和宏みたい見えますもの()
ペアマッチ 

ブラック短篇の場合、安孫子先生ご自身の悲惨な体験をモチーフにされることも多いみたいですね。自虐的である分、リアリティーがあるというか、非常に身につまされるものがあるんですね。僕も『ブレーキ踏まずにアクセル踏んじゃった』の主人公と同じ扱いを、教習所で受けました(苦笑)。僕も教習所で2浪した経験があるんであの主人公が他人とはおもえないんですよ。

名和

藤子マンガによくでてくるのび太のパパみたいな何回も落ちる人って実際いるんだね。
黒幕 

私も仮免の時、三速するのに、シフトレバーと間違えてサイドブレーキを引いた時はギニャーでした()。全然関係ないですけど、本作に出てくる、息子を自動車事故で亡くしたあのおばさんが大好きですね(一同爆笑)
ゲルピン 

ギャンブル物も結構いけますよ。『転べばべったり糞の上』みたいに救いようのないおバカな作品もあれば、『BJブルース』みたいにイカシタやつもある。特に、僕は『BJブルース』が大好きなんですよ。作品そのものが、同時代のアメリカのニューシネマみたいに格好いいですものね。主人公とディーラーとの攻防なんかサム・ペキンパーの映画みたいでシビレますよ。それに導入部の粋なナレーションも安孫子先生ならではですよね。ギャンブル物は、『マカオの男』にしても『赤か黒か』にしても、ホント粋で格好いい作品が多いですよね。実際遊び人じゃなきゃ、あんな臨場感いっぱいには描けないでしょう()

名和 

皆さんは、藤子漫画のどのようなテーマに、強くシンパシーを感じられましたか?。
ゲルピン  

藤子漫画はどれも深いテーマを持った作品ばかりですが、特に感銘を受けたのは、『愛ぬすびと』ですね。たった一つの愛のために、多くの愛を奪い、最愛の人の失ってしまうという人生の皮肉。人を愛するってことは、本当に尊いこと。だから、その愛を弄ぶことは、決して許されることではない。読後にふとそんなことを気付かせてくれました。幼年漫画からこんな大人の愛を真っ正面から捉えた作品まで、藤子先生の作家としての振り子の幅の広さには感服させられますね。
名和 

藤子作品は、全て愛に貫かれていると言っても過言ではないのではと思います。例えば、うらみ念法を使わなかったら、単なるへタレの魔太郎が、由紀子さんのために、殴られたり、半殺しにされたりするのを覚悟で不良とかに立ち向かって行きますよね。それに、のび太にしたって、しずかちゃんを命懸けで守ろうとしたり、「さよならドラえもん」でも、ドラえもんが安心して未来に帰れるようにジャイアンとタイマンを張ったりする。つまり、腕力のあるなしに関わらず、愛する人や大切な仲間のために恐さに立ち向かえる勇気って、本来どんなへタレにもあるんですよ。例え、それが自分のために出来ないとしても、相手のために激情に駆り立てられるみたいな。
黒幕 

ホントですよ。以前、ぽ○っとで「のび太みたいないじめられっ子に対して、いじめっ子に立ち向かえと言うのは、死ねと言っているのも同然だ」とアホなこと抜かしとったエセ藤子ファンがいましたが、笑っちゃいますよ。藤子漫画を読んで、何でそんな発想になるのか聞いてみたいですわ。

名和

(ぽ○っとの投稿を読みながら)ちょっとまってください。こいつゴーゴーじゃないですか。こいつまだこんなこと言ってるんですね。こいつ学生の頃はスネ夫タイプでイジメに率先して加わって楽しんでたとか散々自慢してたくせに良くこんな事言えますよね。ちょっとこれは酷いなあ。

ペアマッチ 

僕が最も感銘を受けた作品は、『パーマン』の「パーマンはつらいよ」なんですよ。誰からも誉められなくてもいい。でも、自分を犠牲にしてまで、辛い目にあっている人達を助けてあげたいと思うのは、単なる優しさや思い遣りではなく、人間の本能として、当たり前のことなんですよね。確かに、それを実行するには、とてつもない勇気と精神力が必要ですし、みんなに助けられながら生きてきた半端者の僕には、実際、そう思うだけで、行動に移せないかも知れません。それでも、そんな志しは、例え人から笑われたとしても、死ぬまで胸に刻んでおきたいんです。だって、僕は、人として大切なこと全てを、藤子漫画から学んだんですから。
稲垣 

ペアマッチくんの今の言葉は、本当に実感がこもっていて、私も胸を打たれました。ペアマッチくんの人を助けようという気持ち、人を思いやる気持ちはとても尊いと思います、現実的には腕力も心も弱いから、強い者に立ち向かえないかもしれないし、人を助けることもできないかもしれない だけど、そういう勇気や思いやりを最初からあきらめてしまいたくはないですね。私も、自分は弱いけれど、だからといって、あきらめちゃいけないんだ、ということを、藤子漫画から学んだ一人です。
ゲルピン 

先程、黒幕さんが仰っていた偽善藤子ファンのように、最初から諦めていたら、問題の解決にもなりませんし、それこそ、あすなろはあすなろのままで一生を終わるんじゃないかと思っているのかも知れないけど、やはり檜になろうという夢は捨ててはいないという、藤子作品のバックボーンである「なろう!なろう!あすなろう!明日は檜になろう」の精神と相反するものですよね。『あすなろうの精神』は、のび太やみつ夫の生き方にも投影されていますし、『まんが道』で、この一節を引用された安孫子先生も「これまで漫画家人生を歩んでこれたのも、この『あすなろ』精神があったから」と仰っています。今では、このあすなろ精神が僕の生きるバックボーンになっています。
稲垣 

漫画の主人公にしては平凡な少年と不思議な現象や不思議な生物とを融合させた作品群は、藤子漫画のメイン・ストリームですよね。その系譜は、『わが名はXくん』を原点としていると私は認識しています。そういった作品の主人公である平凡な少年達は、平均よりも能力や運が劣った者が多くて、その系譜の代表格にのび太や魔太郎がいるんだと私は捉えています。私は、そんな平均より劣った少年達の言動ひとつひとつに共感を覚えるんです。勉強がイヤだとか、運動が出来ないとか、女の子にもてたいとか、新発売のおもちゃが欲しいとか、怠けたいとか。そして、時には、そんなダメな自分が嫌になって、自己嫌悪に陥ったり、たまには、反省して向上心を抱いたり、努力してみたり。そんなこんなで情けない毎日ではあるけれど、自分の生活を諦めて、投げてしまうことなく、自分なりの歩調で生きていく彼らの姿に、私は多いに共感しますね。
名和 

そうですね。その辺は、我々以外にも、多くの藤子ファンが共鳴するところだと思います。ところで、小谷さんは何かございませんか?
小谷 

何といっても、作品の根底に流れる倫理感ですね。私は、絶対的な権力を持つ者や力の強い者が賛美される風潮が気に喰わないんですよ。勿論、一概には言えませんが、権力者や強者って倫理感のない人が実に多いんですよね。私は、力が弱くても倫理感の強い人の方が人間として遥かに尊敬出来ます。おとなしく真面目に生きている者ほど理不尽な目に合う事が多い世の中が、腹立たしくてなりません。その点、藤子作品には、正しく生きることの勇気というか、人間にとって一番大切なことは何か、というテーマが根底にあって、真面目に生きている者を大いに励ましてくれます。
ゆうあ 

それから、これはチャップリンの映画にも通底しているのですが、生きていることの素晴らしさを説いている点ですね。藤子漫画に貫かれている生への賛歌には、私も強く共感致します。
黒幕 

いやぁ〜、皆さん、実にええこと仰る。こんな素晴らしいトークで盛り上がっている中、ガラスを爪で引っ掻くようなことを言って恐縮ですけど()、本音を言うと、私の場合、黒ベエ切人のパパのようなキャラクターにも強烈なシンパシーを感じるんです。ああいう愉快犯的に人を陥れて楽しみたいという気持ちって、例え、口では綺麗事を言っていても、人間誰しも、少なからずはあると思うんですよ。でも、実社会でやったら、問題になっちゃう()。まぁ、これはシンパシーというか、自分が出来ないことに対する憧れ。カタルシスみたいなものですかね。
稲垣 

ハハハ、黒幕さんらしいですね。程々の品位と道徳性が保たれた作品群の裏に潜む奥ゆかしい異常性や道徳性。確かに、私もこういったテーマにも大いなるカタルシスを感じますね。例えば、魔太郎の復讐シーンにおける「コ・ノ・ウ・ラ・ミ・ハ・ラ・サ・デ・オ・ク・べ・キ・カ」と、その時現れる「メラメラメラ〜」という描き文字に愛着があります。魔太郎がこの台詞を決める度に、「おお、もうすぐ大きなカタルシスがやってくる!」と、私の脳内を予期的快感が駆け巡るんです。魔太郎に感情移入しながら、彼の復讐行為を見ていると、現実の生活で捨て去ることは出来ない道徳心や遵法精神からひととき解放され、善と悪という観念からも自由になり、ただ純粋に復讐のカタルシスを満喫出来て実に気持ちがいいんです()

名和 

なるほど、あれだけの膨大な作品を描かれた藤子両先生だけに、そのテーマの多様性というのも、群を抜いてますね。そして、このテーマの多様性こそが藤子漫画そのものに更なる深みと広がりを与えているんでしょうね。

 

名和 

ところで、皆さん、自慢の藤子コレクションというのを、何かお持ちでしょうか?。
ペアマッチ  去年(2004)、ワンフェスでゲットした限定50個の等身大コロ助フィギュアです。メディコムトイの藤子フィギュアは、どれもいい出来ですが、特に、このコロ助は今にも動き出しそうで、実物と見間違えるくらいの素晴らしい造形です。これは、一生の宝ですね。
小谷 

私の場合は、限定品や懸賞で当たった物でしょうかね。まずは、パーマンバッジ。これは、「週刊少年サンデー」の愛読者サービスで当たった物です。それから、藤子不二雄ランド読者ページ掲載記念でもらった下敷き。太陽王伝説前売りキャンペーンで当たったドラえもんリストウォッチ。F短篇パーフェクト版全巻購入特典のメタルといったところでしょうか。
名和 

確かに、どれもプレミア必至のレア物ですね。しかし、資産価値だとか、転売だとかそういった目的で持っているのではなく、、自分にとっての掛け替えのない宝物だからこそ、いつまでも持ち続けるんでしょうね。他の方はどのようなお宝をお持ちでしょうか?。
稲垣 

 私の場合は、安孫子先生からのファンレターのご返事とその時同封して頂いたのサイン色紙です。これはもう、一生の宝です。

SIKISHI.JPG - 37,450BYTESゆうあ 
私は、安孫子先生が実際に付けていらっしゃったビリ犬バッチをファンレターのお返しに頂きました。安孫子先生が身に付けていらっしゃった物を頂けるなんて。その時の感動は言葉で言い表わせません。私にとって、これ以上のお宝はありませんよ。
ペアマッチ 

僕もブックファースト渋谷店で行われた藤子不二雄Aランド完結記念のサイン会の時に、記念に書いて頂いた『怪物くん』のサイン本を持っているんですけど、これはどんなにお金を積まれても、バナナクレープにも売れません。
名和 

そうだね。何に価値観を見付け、何を尊ぶかは、個人の自由なんだ。人に自分の趣味嗜好を強要するのではなく、人それぞれの大切な価値観を尊重していきたいね。これこそまさに問題はカニ鑑ですよね。

 

ゲルピン

 僕の場合、皆さんと違って、レア物もサイン色紙も持っていませんが、敢えて言うなら、死ぬまで永久に繰り返し読むであろう蔵書の藤子本ですね。いつまでも、僕の心を捕らえて離さない藤子作品こそ、僕にとっての一生のお宝だったりします。
黒幕 

私もゲルピンくんと同じですわ。でも、その中で一番大事なのは、何といっても、未収録作品のコピーですね。先程、ゲルピンくんも仰っていましたが、藤子先生の場合、何で、こんな傑作が未収録なのって作品が多いんですわ。そういう作品を年代順にまとめて製本した私家本が、私にとってのお宝かな。

ペアマッチ 

私家本なんて、価値ありませんよ。因みに、僕の持っているてんコミやFFランドには、希少価値のある帯が付いた本も少なくありませんよ。例えばこれ、さっきバナナクレープで、一万二千六百円で買ってきたてんコミ『バケルくん』の2巻なんですが、『新バケルくん』掲載版のレア物です。これだけ藤子不二雄F表記の超お宝です。ワンランク上の藤子マニアは、こういうものを持たなくてはいけませんよ。
黒幕 

だから、資産価値じゃなくて、問題はカニ缶やって!。あんさんみたいに、レア本や、極美や、ギャーギャー騒ぐやつがおるから、本がどんどん高くなるんやぞ。ホンマは、Aランドが出て、みんなが読めるようになって悔しがってるんやろ!。
ペアマッチ 

いえ、僕はあくまでオリジナルの極美にこだわっていますので。復刻本なんか価値はないんですよ。セル画もないですし。クロマキーセットさんは藤子不二雄先生に対する愛が足りないんじゃないですか?
黒幕 

わ・わかった。もういい。参った
ペアマッチ 

そういえば、この間、名和くんの家に遊びに行った時、本は全部並下以下だったので、資産価値はありませんでしたけど、おもちゃはかなりレアな物を持ってましたよね。名和くん自慢のお宝は何でしょうか?。
名和 

おいおい、本は不動産じゃないって(失笑)。まぁ、フィギュアだったら、最近、友達が落札してくれたバンダイのパーチャクパー子とか『ウメ星デンカ』の風鈴フィギュア、『ジャングル黒べえ』のペンダントソフビ(ポピー製)かな。あと、中嶋製作所の『新オバQ』のO次郎のソフビも気に入ってるね。あの時代にしては、なかなか出来がいいんだ。中嶋のでは、ドロンパのソフビが欲しいんだけど、全然出てこないね。
黒幕 

『ジャン黒』といえば、最近、西成の路上店で、アニメの裏DVDボックスを購入したんですよ。これがまた、かなり画像も乱れていて、いかにもテレビの再放送を録画したって感じなんですけどね()。それでも、前々から観たかったやつなので、現物を手にした時は、鳥肌が立ちましたよ。なんでも、東南アジアを経由して輸入された非ライセンス商品とかで、アングラ嗜好の強い私には、その辺も付加価値になっています()。未収録作品の私家本も大切なものですが、今一番のお宝となると、やっぱりこれですね。


名和 

藤子漫画を読んで、みなさんの人生に影響を受けたことなどございましたら、お聞かせ下さい。
稲垣 

10代の後半、思春期特有の苦悩の中にあった私にとって、藤子マンガはバイブルのような精神的拠りどころでした。特定の宗教を熱心に信仰したことのない私が、唯一信仰心といってもいいような心情を呼び起こされたのが藤子マンガなんです。その意味で、宗教心が薄い私に、信仰心を胸に抱くことの尊さを教えてくれたのが藤子マンガだったといえるかもしれませんね。少なくとも、思春期の私は藤子マンガにある種の聖性のようなものを感じてました。いま現在は、信仰とかそういうレベルではなくなってしまいましたが、藤子マンガを読むとか、藤子情報を収集するとか、ブログを更新するとか、プライベートな生活の中心にはやっぱり藤子マンガがあります。藤子マンガに対する異常なまでの宗教的熱狂時代を通過して、今では、3度のメシと同等の生活習慣みたいなものになっています。藤子マンガは、日々、私の心にバランスのよい栄養を与えてくれてますよ。
ペアマッチ 

藤子漫画を読んで、一番人生に影響を受けたことは、何と言っても、藤子作品を愛するという共通のアイデンティティーを持った素晴らしい仲間達と出会えたことですね。同じ価値観を持つこんな沢山の友達が出来たことが、嬉しいんです。今、こうして皆さんとご一緒させて頂いているだけで、理由もなく興奮してきますし、心が熱く満ちてきますね。これも全て藤子不二雄両先生のおかげです。
名和 

ペアマッチくんの極美本への価値観は、極めて特殊なものだと思うけど()、何か、藤子ファン同士が心の中で繋がっているのは、強く感じるよね。
黒幕 

藤子漫画には、脳の記憶の中でライブラリーを形成するぐらいどっぷり浸かっていますが、人生への一番の影響は、こうして漫画やイラストを描くようになったことですね。
ゲルピン 

僕も黒幕さんと同じで、やはり、絵を描くようになったことです。藤子漫画を読んで、高揚した気持ちを早速、自作のイラストで表現してみたり。それから、SF短篇やブラック短篇といった大人向けの作品に出会ってから、物事を多方面から見られるようになりました。あと、妄想癖がますます強くなったかな()。 
ゆうあ 

私も同じく絵を描くようになったことですね。一時期は『まんが道』に感動して、漫画家になろうと思ったこともありました。コロタン文庫の『藤子不二雄のまんが大学』とか若木書房の『きみにもまんがか描ける』なんかも読みましたね。この時学んだ技術が、現在の私の作風の礎になっているのだと思います。とにかく、藤子先生のおかげで一生涯の趣味を得ることが出来ました。 
小谷 

私の場合、しずかちゃんの影響で、牛乳風呂に入るようになったことかな()。でも、藤子作品が私の人生に与えてくれた最大のものは、何といっても、心の安らぎですね。『新オバケのQ太郎』、「伊奈子とU子」で、河伊伊奈子さんがQちゃんをデートに誘い、公園のベンチで受験勉強の愚痴を言った時に、Qちゃんが「どうして、ぼくにばかり会いたがるのさ」と質問するシーンがありますよね。その後、やりとりが、「Qちゃんとおしゃべりしていると心が休まるのよ」、「ははあ、精神安定剤の代わりか」と続くんですが、私にとっての藤子作品は正にこれ!。「藤子不二雄の漫画を読んでいると心が安まるのよ」です。これまでの人生、何度藤子作品に慰められたかわかりません。人生最高
の精神安定剤であり、安らぎの場。それが私にとっての藤子作品です。藤子作品からは、生きていく元気をいっぱいもらいました。
ペアマッチ 

確かに藤子漫画のフィーリングは、まさに癒しそのものですね。作品の根底に流れるヒューマニズム。人間の心の奥深いところまで描かれています。それに、弱い者に対する限りない優しさ。藤子先生はそんな人達を高いステージから見守っているのではなく、同
じ目線で向き合って下さっているんですよね。
稲垣 

そうですね。ペアマッチくんの言うとおりだと思います。藤子作品からそういうスピリットを読みとったペアマッチくんとは、一生心の友≠ナいられそうです。あと、もう少し踏み込んで言うと、弱者への思い遣りある眼差しの他に、弱者への自虐的な攻撃性というのも感じるんですよ。安孫子作品には特にそれを強く感じます。しかし、この二律背反があるがこそ、作品に更なる深みが加わり、弱者への視座をより際立たせているんだと思います。決して客観性を損わない所に、弱者を包容しつつも、弱者への生きる勇気を促す藤子先生の、優しさに裏打ちされた大人の厳しさを垣間見ることが出来ますね。

名和 

皆さんがこれから読んでみたい藤子漫画がありましたら、教えて下さい。
黒幕 

今、一番読みたいのは、『仙べえ』ですね。両先生最後の合作作品というのもありますが、藤子的なシチュエーションコメディーのメインストリーム、最後の作品という印象もありますしね。単行本を探しているんですが、古本屋に入っても、必ずオークションにかけられるか、目録に載って抽選になるかで、店頭で見掛けることは、全くないですね。
ペアマッチ 

『仙べえ』は、あんまり美本以上の物が出てこないんですよぉ。僕は『チンタラ神ちゃん』を極美のPCで読みたいですね。スリップ付きなら、十万でも買いますよ。
黒幕 

本の状態やなくて、中身が見たいんや、ワイは!

ペアマッチ 

僕はワンランク上の藤子ファンを目指していますからね。
ゲルピン

今まで読んだことのない作品は全部読みたいですね。『パジャママン』、『よじげんぼうPコ』なんかは、そのうちぴっかぴかコミックスで出るとは思いますが、絶対、単行本化されないヤバ系の作品が読みたいですね。特に、『魔太郎がくる』の番外編、「魔太郎のおいたち」は、本編が無茶苦茶恐いらしいじゃないですか?ストーリーじゃなくて、本編に出てくる藤子両先生の劇画顔が!(一同爆笑)

でも、一番興味があるのは、日本テレビ版の『ドラえもん』です。これは、多くの藤子ファンが観たいのではないでしょうかね?。他にも、『愛ぬすびと』のドラマ版や雨傘番組でたった一度だけ放映されたという『フータくん』のパイロットフィルムなんかも観たいです。あっ、読みたい漫画の話でしたね、すいません()
小谷 

読みたい作品といいますと、『狂人軍』、『フータくんなんでも会社編』、『名犬タンタン』、『よじげんぼうPポコ』、『とびだせみくろ』、他にも沢山ありますが、ぱっと思い付くのは、これらの作品です。『狂人軍』は、黒幕組合さんの投稿で、興味を持ちました。黒幕さんが仰る、「赤塚ギャグを凌駕する究極のナンセンス」というのを、是非堪能したいですね。『フータくんなんでも会社編』は、第一に未収録というのと、一番好きなA作品でもあるからです。『名犬タンタン』は、みどりちゃんに萌え萌えなので()。『Pポコ』は、最近、単行本化された『モッコロくん』が面白かったので、幼年作品にも強く興味を持つようになったからです。『とびだせみくろ』も『すすめろぼけっと』もSFで面白そうだし、何といっても、可愛い妹キャラがたまりません()
稲垣 

未読の藤子作品が沢山あるというのは、ファンとして幸せなことでしょうか?。特に読みたい藤子漫画は、安孫子先生の『巨人の復讐』、藤本先生の『恐怖のウラン島』など、昭和30年代初め、別冊付録で発表された読み切り作品です。連載物では、安孫子漫画は『プリンスデモキン』の単行本未収録分を、藤本漫画では、『すすめろぼけっと』を完全版単行本で読みたいです。勿論、藤子漫画はすべて読み尽くしたいですけどね()
ゲルピン

僕も、初期の藤本作品はすげぇ読みたいですね。安孫子作品は、『まんが道』とかで、『コンクリートの密林』とか『砂漠の牙』とか割りと初期のものも読めますけど、藤本作品は殆ど復刻されませんからね。『宇宙冒険児』とか『タップタップのぼうけん』とか。数え上げれば切りがありません。
ゆうあ 

私も初期の藤本先生の幼年漫画を読みたいですね。『名犬ラッシー』とか『ピーターパン』とか、特に、版権の関係で復刻困難な作品をまとめて読んでみたいです。昭和30年代の漫画を、ハードカバーなんですけど、貸本テイストで復刻した本って、最近たまに見掛けますよね。ああいう感じで、全話収録の完全版単行本になったら、マニアとして嬉しいですね。
名和 

ソノシートに描き下ろされた単行本未収録の作品も、読んでみたいですね。『オバQ』、『パーマン』といったメジャーな作品も読みたいのですが、一番気になるのが、唯一のソノシートのみに描き下ろされた『もぐっちょちびっちょ大冒険』。これは、キャラクターも可愛いのに、何故、雑誌連載されなかったのか不思議なくらいですよ。
黒幕 

でも、本当に一番読みたいのは、『愛かりうど』(一同大爆笑)。それから、毛沢東思想そのものが否定されつつあった80年代に、描かれる予定であった『林彪死すべし』。『毛沢東伝』以上のドラマチックな展開になりそうですよね。謎とされる林彪の死についても、誰もが想像もつかない安孫子先生らしい大胆な仮説でもって描かれそうですし。もし、『林彪死すべし』が描かれたら、安孫子先生の80年代以降を代表する作品になったことは間違いないでしょう。是非、今からでも描いて頂きたいです。

名和 

それでは、最後に、今後の藤子不二雄を取り巻く状況への発展的な期待などございましたら、お聞かせ下さい。
黒幕 

何といっても、全集の復刊ですね。大御所漫画家で、藤子先生だけじゃないですか?ちゃんとした全集が出ていないのは。他の漫画家は、しょーもない漫画まで復刊されているというのに、名作の『オバQ』がこの世に出ていないのは、理不尽ですよ。
ゲルピン 

そうすよね。それと、どうせ全集が出るなら、『三光』とか『わが分裂の花咲ける時』とか、今まで陽の目を見ていない作品もちゃんと復刻して欲しいですね。藤子漫画には、隠れた傑作、怪作も多いですし、作品というのは、作家がその時代を生きた証なんですから。
黒幕 

『禁じられた遊び』なんかも、今出ているのは、ショートバージョンやしねえ。どういう制約があるのかわからないけど、『野蛮人』でも『狂人軍』でも封印する方が、逆に差別的なんですよ。だって、土人は土人だし、キチガイはキチガイなんだから。別に、それが可笑しいわけでも醜いわけでも、何でもないじゃないですか!ただ、どうしても、狂人という言葉が気になるなら、妥協に妥協を重ねて『驚人軍』にでもタイトルを変えて出して欲しいです()

ゲルピン 

まぁ、言いたい放題言えるのなら、シンエイアニメの全タイトルのDVD化。さすがに全話は無理でしょうけど。でも、『怪物くん』あたりは、割りと早く実現しそうですね。それから、これまで放映したアニメ、実写の全藤子作品を、有料でも構わないので、ダウンロード出来るようになったらいいですね。あと、藤子不二雄Aランドに続いて、藤子・F・不二雄ランドも、そろそろ刊行して欲しいなぁ。
ゆうあ 

全集出版というのは、やはりコストもかかるし、版元にしてもリスクも大きいでしょうから、とりあえず、手塚全集や赤塚全集のようにDVDROMでもいいので、全作品が読める環境を作って欲しいですね。
ペアマッチ 

DVD化に関しては、日本テレビ版の『ドラえもん』も、傑作選という形でもいいので出して欲しいですね。何も歴史から封印することもないと思うんですけどね。それから、藤子キャラがこれからも続々とフィギュア化されるといいですね。今年(2005)は、ヒョンヒョロのまさかのフィギュア化には驚きました。この勢いで、『バケルくん』とか『21エモン』の三点セットとかリリースして欲しいです。あとは、Aランドの第二期の刊行ですね。全百巻ぐらいにはなりそうですよね。
小谷 

最近は『ドラえもん』を初めとするこれまで未収録だった作品が、次々と刊行されるようになりましたよね。これからも、色んな未収録作品や『モッコロくん』のような初単行本化作品が続々とリリースされるといいですね。それと、2006年には、『のび太の恐竜』がリメイクされますので、今後も『宇宙開拓史』から『竜の騎士』までの復活に期待したいです。CDも作品単独の全曲集が沢山出てきてますので 今度はちょっとマニアックなもの。映画『21エモン』の2曲と『TPぼん』の曲、それから、知られざる『フータくん』、『怪人わかとの』等未CD化の曲の発売も期待しております。川崎市のF記念館は、立ち消えになってしまったのかと心配してましたが、復活してくれたので、ほっとしました。一枚でも多くの原画を展示して欲しいです。
黒幕 

それと、A先生のミュージアム設立も、近いうちに、必ず実現して欲しいね。
稲垣 

私の場合、これは期待というよりも、切なる思いなのですが、安孫子先生のご長寿と現役生活のご継続を願うばかりです。
名和 

それこそ、我々藤子ファンの一番の願いでしょうね。それでは、まだ、話足りないところもあるとは思いますが、そろそろテープも切れそうなので、座談会を一旦ここでストップして、二次会会場へと参りましょうか?。
黒幕 

よっしゃあ、気合い入れて、みんなで飲み明かそうや!。女を集めて乱交パーチィ!
ペアマッチ 

ちょっと待って下さいよぉ。さっき、『バケルくん』買ったから、残りあと80円しかないんですよ。二次会はマクドナルドでお願いしますぅ。
一同 

へコーッ・・・。



 

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